顕微授精(ICSI)とは?治療の流れやメリット・デメリットについて

自分たち夫婦の子どもを授かりたい…。

そう願って多くの人が取り組む不妊治療ですが、その最終段階が「顕微授精」です。

顕微授精は体外受精のひとつですが、卵子の中に精子を注入するという特徴があります。

これにより、体外受精では妊娠できなかった人も妊娠の可能性が広がります。

しかし、体外受精と顕微授精では具体的にどのような違いがあるのか分かりにくいですよね。

また、病気によっては不妊治療のスタートが顕微授精の人もいるので、より不安を感じてしまいます。

そこで今回は、

・顕微授精とはどのような不妊治療なのか

・顕微授精の対象となる人や病気

・顕微授精の流れ

・顕微授精のメリット、デメリット

についてまとめました。

これから顕微授精にチャレンジする人の参考になれば嬉しいです。

顕微授精とはどんな治療なの?

顕微授精(ICSI)とは、顕微鏡で見ながら細い針を使って卵子に精子を注入し、受精させる方法です。

1992年(平成4年)に、世界で初めて顕微授精による赤ちゃんが誕生したことから始まりました。*1

日本産婦人科学会によると、顕微授精の新鮮胚における移植あたりの妊娠率は、射出精子18.2%、TESE精子14.9%でした。*2

(TESE精子とは、手術で精巣内から直接取り出した精子のことです。詳しくは、次の見出しで説明します。)

体外受精に比べればやや低い数値ですが、妊娠の可能性があるのは希望がもてますね。

顕微授精の特徴は、卵子に1個の精子を注入し受精させることです。体外受精では、卵子と複数の精子をシャーレに入れ受精するのを待つので、ここが大きな違いになります。

顕微授精は1個の精子があればいいので、精子の数が少なくても妊娠できる可能性があります。

顕微授精の対象となる人や病気とは?

カルテを見ながら問診する医師の写真

では、どのような場合に顕微授精の対象になるのか、みていきましょう。

①体外受精を行っても妊娠にいたらなかった人

年齢が40歳に近づいている場合は、早めに顕微授精に切り替えることもあります。

②精子の数が極端に少ない人(乏精子症)

受精にはある程度精子の数が必要なので、精子の数が少ない人も顕微授精の対象です。

③精子の運動率が低い人(精子無力症)

精子の前に進む力が弱いと、卵子までたどりつけないため受精しにくくなります。

④精液中に精子がない人(無精子症)

ただし、無精子症で顕微授精できるのは、精巣から精子を取り出せたときのみです。

TESE(精巣内精子採取術)という手術にて精巣を切開し、精子があるかどうか確認します。

もし見つからなければ不妊治療はできないので、残念ですが妊娠を諦めることになります。

⑤抗精子抗体が陽性

抗精子抗体とは、精子を異物として排除してしまう抗体のことです。

これがあると、いくら精子の状態が良くても卵子までたどり着けず、受精できない可能性があります。

顕微授精の流れ・スケジュールは?

基礎体温の記録の写真

ここで、顕微授精がどのような流れで進んでいくのか、お話しします。

①排卵誘発

採卵に向けて、質の良い卵子を育てていきます。

排卵誘発の方法は、2種類あります。

・刺激周期:排卵誘発剤を使って、卵子を複数育てます。刺激周期のメリットは、受精卵がいくつかできる可能性があることです。そうすれば凍結でき、もし今回陰性でも次の治療を移植からスタートできるので、身体の負担を減らせます。

・自然周期:薬を使わずに、卵子を自然に成長させます。定期的にエコーで卵子の大きさをチェックし、採卵前には排卵しないよう排卵抑制剤を使います。

②採卵、採精

膣から器械を挿入し、卵巣から卵子を採取します。

採卵は多くの場合麻酔を使いますが、病院やその人の状態によっては麻酔なしで行うこともあります。

このタイミングで、男性は採精をします。

無精子症の人はTESEで精子を採取し、凍結したものを使う場合も多いです。

③受精

状態の良い卵子と精子を使って卵子の中に精子を注入し、受精したことを確認します。

④培養

通常2~5日培養させ、分割状態や分割スピードから質の良い受精卵を見極めます。

⑤移植

採卵と同じ周期で移植する場合と、受精卵を凍結させ次の周期に移植する場合があります。

凍結させる理由は

・排卵誘発剤による副作用悪化を避けるため

・子宮の環境を整え、良い状態を見極めて移植するため

などです。

排卵誘発剤による副作用については、次の見出しで説明します。

顕微授精のメリット・デメリットは?

メリットとデメリットの写真

顕微授精には、メリットとデメリットの両面があります。

特にデメリットはしっかり把握し、夫婦で相談しながら不妊治療を進めていきましょう。

メリット

①受精に問題があっても、最後の手段として選択できる

体外受精と異なり、顕微授精は卵子に精子を注入して授精させます。

そのため、受精できない原因があったとしても、妊娠の可能性が広がります。

デメリット

①排卵誘発剤の副作用がある

採卵にはいくつかのリスクがありますが、そのなかのひとつが卵巣過剰刺激症候群(OHSS)です。

刺激周期で使う排卵誘発剤の副作用で、卵巣が腫れます。

その結果、腹水や息苦しさを感じ、重症の場合は入院する必要があります。

②流産の可能性もある

新鮮胚を用いた顕微授精における流産率は、射出精子28.5%、TESE精子27.6%でした。*2

一般的な頻度は15%といわれているので、顕微授精の流産率が高いことが分かります。*4

理由としては、顕微授精をする女性の年齢が他の不妊治療に比べて高い傾向にあることが考えられますが、はっきりとした原因は分かっていません。

③障害や染色体異常などのリスクがはっきりしていない

日本生殖医学会は、「現時点で、顕微授精で生まれた子供に形態異常や染色体異常が体外受精と比べて多いとは言われていませんが、まだ私たちがわからないリスクがある可能性があります。」と述べています。*3

顕微授精は不妊治療のひとつとして広まっていますが、現状では分からない部分もあるということです。

そのため、顕微授精を行うのは、顕微授精しか妊娠の可能性がない場合にのみにするよう勧めています。

男性不妊でおさえておきたい顕微授精のポイント

上記のメリット・デメリットに加え、男性不妊で顕微授精をする場合はこちらのポイントもおさえておきましょう。

①男性不妊が原因でも女性の負担が大きい

男性不妊でも、精子を採取できれば男性の治療は終わりです。

しかし、女性は採卵に向けて何度も通院し、薬の副作用にも気をつけて過ごさなければいけません。

仕事をしている人であれば、通院のために仕事を休むこともあります。

職場の理解が得られない場合は、精神的にもストレスがかかります。

もちろん、男性不妊による不安や悩みは、男性にとって重く苦しいものです。

しかし、女性にも大きな負担がかかることを受け止め、夫婦で支え合っていきましょう。

②男性不妊のなかには、赤ちゃんに遺伝するものもある

男性不妊の原因はさまざまですが、男性のY染色体にある精子を作る部分(AZF領域)が欠損している場合は、赤ちゃんが男の子だと遺伝する可能性があります。

仕組みを簡単に説明すると、性染色体は男性がXY、女性がXXです。

赤ちゃんが女の子であれば、お父さんとお母さんそれぞれのX染色体が遺伝しXXになるので遺伝しません。

しかし男の子の場合、お父さんのY染色体とお母さんのX染色体が遺伝しXYになるため、男性不妊が遺伝する可能性が高まります。

男性不妊と診断されたら検査で原因を特定し、遺伝する可能性についても医師から説明をうけたうえで治療を進めていきましょう。

まとめ

人工授精や体外受精を繰り返してきた人は、心身ともに、また経済的にもダメージが積み重なっています。

顕微授精は不妊治療の最終段階なので、悔いを残さないよう夫婦で話し合いながら取り組むことが大切です。

また、病院や先生によって考え方が違うこともあります。

疑問があるときは確認し、1歩ずつ進んでいきましょう。