不妊治療中から夫婦で考えたい。子育ての選択肢「養子」とは?

いくら頑張っても、結果がでないことも多い不妊治療。

生活習慣を見直したり、節約して治療費にあてたりと、自分にできることを取り組んでもなかなかうまくいかず、心が折れそうになることもありますよね。

リセットを繰り返し、振り出しに戻るたびに「このまま不妊治療を続けていくのか」と迷う人もいると思います。

それと同時に、もうひとつの選択肢である「養子」が頭に浮かぶかもしれません。

「まだ不妊治療を頑張っているのに、養子なんて考えたくない」と思う人もいるでしょう。

しかし、育ての親に年齢制限を設けている民間あっせん機関もあり、養子を決断したときには遅かったという人もいます。

さらに、夫婦の意見をすり合わせるのに時間がかかり、年齢のタイムリミットを過ぎてしまう人も。

不妊治療中から養子縁組制度を知り、今後の生き方について夫婦で話し合いを重ねることが大切です。

そこで今回は、

・社会的養護に対する日本の取り組み

・普通養子縁組と特別養子縁組の違い

・里親について

・なぜ不妊治療中から養子を考えた方がいいのか

についてまとめました。

実際に特別養子縁組で子どもを迎え、子育てをしている私が解説しますので、ぜひ参考にしてください。

子どもたちの現状と日本の社会的養護に対する取り組みとは?

日本には、虐待や予期せぬ妊娠など何らかの事情があり、産みの親と暮らせない子どもが約46,000人います。*1

このような子どもは、全ての子どもがもつ「幸せに育つ権利」を優先し、社会全体で育てる必要があります。

これを「社会的養護」といい、子どもが安心して暮らせるように国や自治体が取り組んでいます。

産みの親と暮らせない子どもは年々増えており、日本では施設で暮らす子どもが圧倒的に多くなっています。

厚生労働省の資料によると、平成24年度末のデータでは児童養護施設が77.2%、里親等が14.8%でした。*2

徐々に里親等委託率は上昇しているものの、まだまだ施設で暮らす子どもが多いのが現状です。

しかし、近年は施設ではなく家庭で過ごす子どもを増やそうとしています。

平成28年に改正された児童福祉法では、産みの親の養育が困難な場合は、施設ではなく里親や特別養子縁組など家庭養育を優先するよう規定されました。

なぜなら、子どもの成長にとってメリットが大きいからです。

子どもは、小さいうちから特定の大人と信頼関係を築くことで安心でき、自己肯定感を確立します。

また、施設で暮らす場合は原則18歳で退所し、自立しなければいけません。

18歳で経済的にも精神的にも自立するのは、あまりにも酷です。

そのため、進学や就職で新しい環境に変わってもなじめず、退学したり精神疾患を患ったりする子どももいます。

子どもが健やかに成長し、生きる術を身に着けるためには、温かい家庭で育つことが大切です。

普通養子縁組と特別養子縁組の違いとは?

養子に出すの写真

養子には、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類あります。

普通養子縁組

親権は育ての親にありますが、産みの親との親子関係は残ります。

そのため、戸籍には産みの親と育ての親、両方が記載されます。

さらに、離縁もできます。

特別養子縁組

昭和63年に施行された制度です。

さまざまな事情により産みの親と暮らせない子どもと、戸籍上も親子になります。

ポイントは、産みの親との法的関係が切れ、育ての親のみが親権者になることです。

原則、離縁はできません。

また、普通養子縁組と特別養子縁組の違いは、以下の通りです。

①続柄

普通養子縁組では「養子」「養女」と記載されますが、特別養子縁組では「長男」「長女」になります。

②成立までの手続き

普通養子縁組は、養子縁組届を役所に提出します。

特別養子縁組は、子どもにとって本当にベストな選択なのか、家庭裁判所で審判が行われます。

裁判申し立てから6か月以上養育し、育ての親が適切に養育できていると判断されれば入籍できます。

原則として、産みの親の同意が必要です。

③子どもの年齢

普通養子縁組は、育ての親より年下であれば、特に年齢制限はありません。

特別養子縁組は、原則6歳に達していない子どもが対象です。

ただし、民法が改正され、令和2年4月1日より原則15歳未満に引き上げられました。

最近では、普通養子縁組より特別養子縁組に注目が集まっています。

その理由は、主に3つあります。

・永続的に親子関係を結ぶことで、子どもの心身の発達が安定する。

・生涯にわたって、子どもの成長を見守ることができる。

・産みの親と法的関係が切れるので、扶養義務がなくなる。万が一、産みの親に借金があっても相続しないので、子どもを守れる。

里親とは?養子とどう違うの?

ハートを持つ親子の写真

養子に近い制度に、里親があります。

里親とは、さまざまな事情で産みの親と離れて暮らす子どもを、自分の家庭で育てる制度です。

これだけ聞くと、養子と同じ制度なのでは?と思いますよね。

実は、里親と養子にはさまざまな違いがあります。

里親に迎えられる子ども(里子)は、施設で暮らしています。

産みの親が病気で入院している、経済的に困窮しており仕事を立て直しているなど、一時的に子どもと離れることで生活環境の改善を目的とする場合があります。

一方で、今後も産みの親と暮らせる見込みがないのに、親権を手放したくないためにずっと施設で暮らさざるを得ない子どももいます。

そのような子どもたちにも、温かい家庭で暮らす機会を提供するのが、里親制度です。

里親の期間はさまざまで、週末のみ、季節休暇中の数週間など、短期間から迎えることもできます。

ただし、里親と生活できるのは、原則18歳までです。

養子と違い、里親と子どもの間に親子関係はありません。

産みの親とのみ親子関係を結び、親権も産みの親がもちます。

里親は国からの補助があり、里親手当や一般生活費などが支給されることも特徴です。

不妊治療中から養子を考えた方がいい2つの理由

私個人としては、子どもを授からなかったらどういう人生を歩むのか、不妊治療中から考えることをおすすめします。

特に養子を考えているのであれば、早めに夫婦で話し合った方がいいです。

その理由は、2つあります。

①育ての親に年齢制限を設ける場合がある

法律では、育ての親は25歳以上の夫婦(一方が25歳以上であればもう一方は20歳以上でも可)とし、上限はありません。

しかし、特別養子縁組が子どものための制度であることから、体力・経済力を考慮し40歳~45歳を上限とする民間あっせん機関があります。

例えば、50歳のときに0歳児を養子に迎えると、子どもが20歳のときに育ての親は70歳です。

0歳児から育てるには体力が必要ですし、子どもが大学に進学した場合は退職後も学費を支払わなければなりません。

一方、児童相談所では明確な基準を定めていないようです。

しかし、養子縁組里親について、里親委託ガイドラインには「養子里親の年齢は、子どもが成人したときに概ね65歳以下となるような年齢が望ましい。」と記載されています。*3

不妊治療をやめるのが40歳以降で、そこから養子を検討すると間に合わない可能性があります。

②夫婦の意見をすり合わせるのに時間がかかる

私は、所属する民間あっせん機関の説明会で、育ての親希望者の相談を受けた経験があります。

そこには、養子に対して温度差がある夫婦、特に乗り気でない男性が多くいました。

夫婦の意見がまとまらず年齢の上限を迎えてしまい、養子をあきらめる夫婦も少なくありません。

養子を迎えるかどうかは、夫婦にとっても子どもにとっても、一生を左右する決断です。

じっくり考えるため、早めに話し合うことをおすすめします。

③養子という選択肢があることで、気持ちに余裕がうまれる

不妊治療でリセットが続くと、精神的に参ってしまいますよね。

「このまま子育てができなかったら、どうしよう」という不安がストレスになり、不妊治療がつらくなる原因になります。

そこで、養子という選択肢が頭の片隅にあれば、「もしこのまま子どもを授からなくても、子育てできる方法はある」と気持ちに余裕がうまれ、不妊治療のストレス軽減につながります。

まとめ

温かい家庭で子どもを育てる養子縁組制度は、社会にとって意義のある制度です。

また、子どもを授からなかった夫婦にとっては、子育てできるチャンスでもあります。

そのチャンスを逃さないためにも、不妊治療後の生活について早めに話し合うことが大切です。

なかなか意見が一致しなくても焦らず、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

参照サイト

*1

参考)厚生労働省 「社会的養護の現状について(参考資料)」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf 1P

*2

参考)厚生労働省 「社会的養護の現状について(参考資料)」

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/syakaiteki_yougo/dl/yougo_genjou_01.pdf 22P